希望と絶望のなかで生きる人間の営みや、
やすらぎをもたらす自然への、尽きぬ思いを描きつづける画家の痕跡。
「よくなったなあ、とにかく、絵が、分るようになったよ、展覧会やるか」
先日、彼がまた何十枚か絵を持ってきたとき、私はそう言って笑った。
「そうですか」
と、彼も笑顔になったが、昔なら必ずあるはずの、あの一言は、こんどはなかった。
洲之内徹寄稿より
1946年、和歌山県日高郡日高町小浦に生まれた宮本秀信は、18歳で上京し武蔵野美術大学に入学。
森芳雄、麻生三郎という戦後の洋画界を代表する画家の薫陶を得て、画家としての基礎を築いた。
絵画教室で生計を立てながら、ひたむきに絵を描き続けた約50年間に及ぶ画業は、逆風、順風、単調ならざるものであった。しかしながら、スランプに陥りながらも、一歩一歩、着実に自己の信じる絵画の理想を追い求めてきた。
その理想とは、一言でいえば「人間のいる絵」であり、「生活のある絵」である。
このふたつは、宮本が深く尊敬する麻生三郎が良く口にした言葉でもあった。また洲之内徹のもとに10年通い続け、1987年ついに現代画廊での個展を実現、粘りの人でもあった。
古希を過ぎてもなお変わらずに、希望と絶望のなかで生きる人間の営みや、安らぎをもたらす自然への尽きぬ思いを描き続ける宮本秀信。本書は、満を持してこれまでの画業をまとめた本格的な初画集。
著/宮本秀信
監修/土方明司
B5変型 仮フランス装 220頁(図版187点)
◆宮本秀信(みやもとひでのぶ)
1946年 和歌山県日高郡日高町小浦生まれ。
1969年 森芳雄の指導を受け、武蔵野美術大学専攻科卒業。
1970年から五本木絵画教室を始め、現在に至る。
1971年 麻生三郎の指導を仰ぐ。
1973年 笹薮政子と結婚。初個展を開催(日本画廊、’77年)。麻生三郎先生に寄稿いただく。
1974年の春から年末まで、パリを拠点にヨーロッパ12か国をまわるスケッチ旅行。
1975年 「水曜会展」出品(やまと画廊)。「75年展」出品(上野の森美術館)。ともに1981年まで。
1978年 「主体美術展」出品(1991年まで)。「アンデパンダン展」出品(現在まで毎年出品)。
1983年 個展(ミタケ画廊)。
1988年 個展(現代画廊)。1978年から洲之内徹のもとに通いつづけ実現。
1992年 アトリエオープン記念個展。
1994年 「新作家展」結成に参加、現在まで毎年出品(セントラル美術館、2002年から東京都美術館)。
2000年 個展(文藝春秋画廊)。画文集『コレスポンダンス 酒と薔薇』を出版。「第7回新作家展」で奨励賞受賞。
2003年 個展(みゆき画廊)。
2005年 「第12回新作家展」で協会賞受賞。
2006年 「日韓美術交流展 2006京都」出品(京都市国際交流会館)。個展(横浜赤レンガ倉庫)。
2009年 個展(清澄画廊、’11、’13年)
2011年 《花の髪飾り》、《ここを去らず》が大館郷土博物館に収蔵。
2015年 個展(ギャラリーオカベ)。「春季新作家展2015」出品(東京銀座画廊・美術館)。
2017年 初画集『宮本秀信画集』を求龍堂より出版。画集出版記念個展(目黒区美術館 区民ギャラリー)。
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