上村松園の名随筆二冊の全文を収録し「全随筆集」として復刻。
7,500部突破!
画業を貫き通した女(ひと)、上村松園の生き様が放つ。
自分を欺いた画は描いて来たようには思いません。
―上村松園
ただ美しいだけの「美人画」の概念を越え、内なる強さを秘め息づく女性の美を描いた上村松園。
描かれた女性像は一世紀近くの歳月を経た今日も匂いたつような気品と凛としたたたずまいで、見るものを魅了し続ける。
女性がひとりで生きていくことさえも難しかった時代に、筆一本で自分の道を切り開き、永遠の美の世界をつくり上げた画家の生きる姿は、現代の我々に大いなる勇気を与えてくれる。
<目次>
■ 青眉抄
眉の記
髷
車中有感
九龍虫
無題抄
あの頃――幼ものがたり
画学校時代
最初の出品画――四季美人図
画室談義
縮図帖
健康と仕事
棲霞軒(せいかけん)雑記
作画について
三人の師
謡曲と画題
花筐と岩倉村
母への追慕
四条通附近
孟母断機
軽女
税所敦子孝養図
楠公夫人
友人
簡潔の美
砂書きの老人
旧作
屛風祭
余齢初旅――中支游記
■ 青眉抄その後
舞じたく
蛍
雷同性に富む現代女流画家
《汐くみ》の画について
朝顔日記の深雪と淀君
応挙とその時代が好き
帝展の美人画
思い出
画道と女性
好きな髷のことなど
座右第一品
虹と感興
靄の彼方
浮世絵画家の肉筆
写生帖の思い出
幼き頃の想い出
絹と紙の話と師弟の間柄の話
旧い記憶を辿って
女の話・花の話
双語
京のその頃
苦楽
山の湯の旅
謡曲仕舞など
無表情の表情
ああ二十年
画筆に生きる五十年
絵だけ
《草紙洗》を描いて
迷彩
京の夏景色
昔のことなど
中支遊記
■ 初出一覧
著/上村松園
四六判 上製本 384頁(巻頭口絵4頁)
◆上村松園 (うえむらしょうえん)
明治八年(一八七五)、京都市に、葉茶屋を営む上村家の次女として生まれる。
本名、津禰。父は誕生の二ヶ月前に他界し、母の手により育てられた。
十二歳で京都府画学校に入学、鈴木松年に師事し、翌年松年の退職に伴い画学校を退学、松年の塾生となる。
その後、幸野楳嶺、竹内栖鳳に師事。
明治二十三年(一八九〇)、第三回内国勧業博覧会の出品した《四季美人図》が一等褒状を受賞し、英国コノート公の買い上げとなるなど海外の博覧会、国内の美術展で受賞し早くより女流日本画家として活躍。
昭和二十三年(一九四八)には女性として初めて文化勲章を受章した。
昭和二十四年(一九四九)、七十四歳で逝去。
日本画家の上村松篁は息子、上村淳之は孫にあたる。
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