清明なるモダニズム
独自の世界を追求する、笠井誠一の全画業を集大成。
笠井自身の一見したところすこぶる具象的な<静物>のあまりに截然とした輪郭線は、実は具体的なそれではなく、ほとんど抽象的ともいえる幾何学上の要請つまり3次元性あるいはイリュージョニズム抜きの、2次元の厳格な境界線に等しいことを暗示しているのではないだろうか。
そしてこうした直観を補強するのが、画家自身の「形と形の織り成す様々な空間を追求していると、無限の世界が広がっていくような気がして飽きることがありませんね」という、モチーフの具体性をまったく無視した、もはや抽象画家のそれとしか思えない明言なのである。
本江邦夫(本文より)
著/笠井誠一
編集/名古屋画廊
論文/本江邦夫(多摩美術大学教授)
300×300mm 布装上製本函入り 276頁(カラー168頁、カラー図版約900点、単色図版約300点)
◆笠井誠一 (かさいせいいち)
1932年 北海道札幌市に生まれる。
1957年 東京藝術大学卒業(伊藤廉教室)。
1959年 同大学油画専攻科修了。フランス政府給費留学生として渡仏。国立パリ美術学校入学、モーリス・ブリアンション教室に学ぶ。
1966年 帰国。
1967年 愛知県立芸術大学講師となり愛知県長久手に移住。
1968年 名古屋画廊第1回個展(以後合計20回)。
1972年 八王子にアトリエと住居を新築。
1974年 愛知県立芸術大学教授となる。
1985年 第37回立軌会に同人として参加。
1990年 名古屋市芸術特賞受賞。
1996年 ポメリー中部文化賞受賞。
1997年 愛知県立芸術大学退官記念「笠井誠一展」。
2001年 第24回安田火災東郷青児美術館大賞受賞・記念展。
その他 個展、グループ展多数。現在、立軌会同人、愛知県立芸術大学名誉教授。
室内(観葉植物のある) 1986年
左:二つの卓上静物 2000年 右:船(西浦近郊) 1973年
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