画家 東山魁夷の厳しい眼差しと親しみのある微笑み
昭和を駆け抜けた芸能人たちが見せる一瞬の表情
ここにはひとりの写真家がシャッターを押した貴重な瞬間がある
日本画家東山魁夷・平山郁夫に同行した記録写真、昭和を象徴する芸能人たちのポートレート、臨場感のあるステージ写真……見たことのない貴重な写真の数々を収めた初写真集。
第1章 寺島照夫が捉えた風景画家・東山魁夷の軌跡
第2章 寺島照夫が捉えた日本画家・平山郁夫「鎮魂と平和への希求」
第3章 寺島照夫が捉えた一時代の象徴
ボブ・ディラン/デヴィッド・ボウイ/ハナ肇とクレージーキャッツ/高倉健/石原裕次郎/堺正章/沢田研二/さだまさし/坂本龍一/森田健作/中村雅俊/草刈正雄/八代亜紀/藤圭子/天地真理/西城秀樹/郷ひろみ/キャンディーズ/ピンク・レディー/松田聖子
市川市東山魁夷記念館特別展「写真家・寺島照夫が捉えた一時代の象徴」公式図録兼書籍(市川市東山魁夷記念館、2024年3月2日〜 24日)
写真家の寺島照夫は、名声を博しても努力を惜しまぬ日本画家・東山魁夷の姿を様々な側面から捉えることで、唯一無二の写真世界から、その魅力を最大限に引き出した功労者といえる。
被写体を捉える確かな技術が認められ、『写真集 東山魁夷の世界』[集英社1979年]の撮影を担当した寺島は、その誠実な人柄から東山魁夷の信頼を確かなものとし、その親交は東山魁夷が90歳で歿するまで続いた。
日本国内はもとより、ドイツや北欧など海外での取材旅行にも同行。自然光や影を駆使したドラマティックな写真表現によって、自然との対話を重んじる風景画家の姿を見事に捉えている。本来ならば、その場に存在することさえ許されない静寂に包まれた画室での制作の場においても、寺島はシャッターを切った。
国民的画家とも称された東山魁夷の日本画家としての神髄に迫った写真の数々は、まさにドキュメンタリー性を備えるものとなっている。
株式会社集英社写真部に所属という経歴を持つ寺島照夫は、同社退社後もフリーの写真家として、多岐にわたる分野において著名人の肖像写真を多く手掛け、その手腕を大いに発揮した。そのようななか、日本画家の東山魁夷や平山郁夫と尊い縁に結ばれたことから、祈りを込めた画業を貫いた両画家の崇高な精神性を写し留めることに、活路を見出した写真家でもあった。
「写真家・寺島照夫が捉えた一時代の象徴」展の構想中、病床の身にありながら、「写真家人生の宝」とする東山魁夷の写真はもとより、国内外におよぶ著名人の膨大なフィルムから、一時代を華やかに彩った俳優、歌手、アーティストの肖像写真も、本書発行のために自ら厳選。五十年余りの写真家人生を振り返りつつ、一枚一枚の写真への思いを語りながら、最後の力を振り絞って写真を選び抜いてゆく姿は、まさに達観の境地に至っていた。誠に残念ながら、2023(令和5)年1月のご逝去を悼み、追悼写真集として、このうえない誠実さからなる写真家・寺島照夫の足跡に沿うことで、その魅力に迫る。
編著/石田久美子
B5判変型 並製本 160頁(図版約120点)
【展覧会情報】
市川市東山魁夷記念館令和5年度特別展「写真家・寺島照夫が捉えた一時代の象徴」
会場:市川市東山魁夷記念館 ≫
会期:2024年3月2日(土)〜2024年3月24日(日)
※本書は本展の公式図録兼書籍です。
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