求龍堂選書シリーズ《 夏目漱石 》
漱石は書家ではなかった。
だからこそ書道文化を眺望できたのだ。
夏目漱石は近世以来の漢学の伝統のなかで書を享受した最後の世代であり、“非書家”であったからこそ近代の書道文化を眺望できた稀有な存在であった。本書は、『草枕』『行人』などにみる漱石独自の書道観や『こゝろ』の装丁などを通して、漱石の作品と近代の書道文化の変容について考察した、今までにはない視点と発想で挑んだ画期的な書。
<目次>
序文 「書道史研究における概念研究の扉」/福井淳哉
序論 近代以降における書の多様性
第一節 美術と書の関係
第二節 夏目漱石と書
第一章 漱石と「書」─漢学と書道文化
第一節 漢学と書道文化
第二節 漱石の文学作品の中にみる漢学と書
第三節 漱石の漢学志向と日本人としての自意識
第四節 小結─学書基盤からみる漱石の書道観
第二章 夏目漱石と王羲之
第一節 日本文化と王羲之
第二節 漱石と王羲之書法
第三節 漱石の王羲之観
第四節 「模倣と独立」─漱石の書道観における「独立の精神」
第五節 小結─書における多様性の容認
第三章 小説に描かれた書(一)─『草枕』の場合
第一節 『草枕』における美術
第二節 黄檗の書
第三節 漱石と黄檗宗
第四節 小結─『草枕』における黄檗の書
第四章 小説に描かれた書(二)─『行人』の場合
第一節 描かれた書
第二節 『行人』における「喪乱帖」
第三節 『行人』の構成
第四節 「喪乱帖」の書写内容について
第五節 小結─書の果たす役割
第五章 『こゝろ』の装丁について
第一節 漱石遺愛品目録について
第二節 漱石と上海画派
第三節 『こゝろ』の装丁と「石鼓文」
第四節 呉昌碩の影響
第五節 漱石の篆書に対する理解
第六節 漱石の装丁にみる篆書
第七節 小結─文字の造形美への着眼
結論 近代以降における書の教養と表現─
あとがき
参考文献一覧
著/河島由弥
序文/福井淳哉
四六判 並製本 234頁(図版65点)
◆河島由弥(かわしまゆうや)
1991年、神奈川県相模原市生まれ。
帝京大学文学部日本文化学科卒業。
帝京大学大学院文学研究科日本文化修士専攻博士前期課程修了。
同文学研究科博士後期課程修了。
博士(文学)
平成年度冲永荘一学術文化功労賞受賞。
現在、帝京大学文学部日本文化学科非常勤講師。
主な著書に『日本書道文化の伝統と継承─かな美への挑戦』(求龍堂・共著)など。
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