圧倒的迫力の被写体がノンストップでたたみかけてくる!
”写真家・桑嶋 維”が撮る闘牛、闘犬、闘鶏、ボクサー等プライドをかけて戦う勝者たちの姿が美しい注目の写真集。
小説家丸山健二が本書に寄せたこの言葉にあるように、写真家桑嶋維(くわしま・つなき)のとらえる世界は、癒しだ、優しさだ、といったあやふやなイメージの世界を叩きつぶす。
桑嶋は古来より伝統文化として日本各地で行われてきた闘牛、闘犬、闘鶏等「闘う動物」を一心に追 い続けてきた。そこには全身全霊で闘うものの姿を通じて「生きていく本能」が写り込んでいる。
そして、そこには「最強の力」を次代に伝えようとする遺伝子の意志と同じ程の、人間と動物の絆なくしてはありえない「営み」が確かに写っている。
モノトーンのストイックともとれるカバーをひとたびめくると、闘うべくして選ばれた動物たちの研ぎ澄まされた美しさと、勝利を渇望する人間の“熱”が、圧倒的迫力で見る者を最後まで引っ張る驚くべき一冊。
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四億もの同胞を敵に回して勝たねば、僕らはこの世に生まれてくることはできなかった。
奇蹟の勝利者たちは、この地球上に六十億の鼓動を響き渡らせている。
生きているという幸運の連続にいつしか麻痺してしまった僕らは、 自らの存在を個々で実感することができず、常に他者を必要としている。
時に異質なモノを全て排して他と群れを成し、時に自分だけの存在 意義の手掛かりを捜す為に他と競い合う機会を窺う。
僕らは他者や自分までも傷つけながら、この矛盾を繰り返す。勝利者の証として命を獲た僕らは、闘うまでに生を欲する動物だ。
肌や髪、瞳に様々な色を持つ人々で世界は鮮やかに着色されているように見えるが、その下地となっているのは、僕らの内を流れる血の 色だけなのだ。
その色こそが、生きとし生けるもの全てに分け隔てることなく、神が与えし唯一の色−絶対色−というべきものである。
光り射す場所にしか色は存在しない。真っ白と真っ黒との間に閉じ込められた無数の色の中から、自分だけの色を僕は解き放したい。
僕が見ている色は、君の瞳にも同じに映るのだろうか。
(本文テキストより)
写真/桑嶋維
B5変型 並製本 192頁(カラー図版81点)
◆桑嶋維 (くわしまつなき)
1972年東京都台東区吉原生まれ。ロンドンで写真を学ぶ。
帰国後、写真家としてファッション、広告、雑誌等で活躍。
現在 その才能に注目の集まる期待の若手写真家。
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